清算条項を定めた後は何も請求できないのか

甲(夫)及び乙(妻)は、本件に関し、以上をもって円満に解決したことを確認し、本書に定めた事項以外に財産分与、慰謝料等名目を問わず相互に何らの金銭的請求をしない。

上記は清算条項と呼ばれ、主に離婚協議書に記載される項目です。
口語で表記すると「離婚協議書の中で全て財産分与や慰謝料は完了しているため、お互い、後出しで請求を一切いたしません」という意味であり、この清算条項を記載しておく事で、離婚した後に相手から「よく考えるとやっぱり慰謝料が安すぎる!」「もっっと財産分与の取り分を増やせ!」といった後からの請求を防ぐことが可能となります。
後々のトラブルを防ぐために非常に有効な項目であり、一般的に離婚協議書には必ずといっていいほど記載されています。

では、逆にこの清算条項を含めた場合、全く請求する事が出来なくなるのでしょうか。

この清算条項は鉄壁の項目かと思われがちですが、実は決してそうではありません。
いくつか例外があり、代表的なケースとして下記の項目が挙げられます。

 

◆夫婦間で新たな協議を行う事に合意したとき
 清算条項はあくまで夫婦間での合意です。
 そのため、夫婦間で再度協議を行う事を合意したときは、新たな協議書において新たな請求を定める事も可能です。
 ただしこれはあくまで双方ともに「話し合う」事に合意した場合の話です。一方からの請求に対して、もう一方が清算条項を根拠に拒めば、当然、それ以上の請求や追及はできません。

 

◆年金分割
 年金分割とは日本年金機構が行う手続きであり、その請求先も日本年金機構となります。
 そのため協議書に「相互に何らの金銭的請求をしない。」という清算条項があったとしても、離婚後に年金分割の請求手続きや、裁判所に年金の按分割合について定めを求める調停や裁判を申し立てる事が可能です。
 ただし年金分割は離婚後【2年】で時効となるため、そこまでに「日本年金機構」での手続きを完了しなければなりません。年金分割に関する公正証書の作成や、審判・判決で分割割合の決定を得ただけでは手続きが完了したわけではありませんので、この点はくれぐれもご注意ください。

 

◇子どものための費用(≒養育費)
 「養育費そのものを定めていない」或いは「養育費を受け取らないと定めた」離婚協議書でも、清算条項を跳ね除けて「子どものための費用」を請求できる可能性があります。
 上記のようなケースで、親権者が非親権者に対して養育費の請求が出来なくとも、子ども自身が非親権者に対して自身の扶養を請求する権利(扶養請求権)が認められているため、こちらを根拠に扶養料(実質的な養育費)を請求する事も可能です。

 

 

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